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テキストサイトの愉しみ

〜 ハイパーでテキストな日記達 〜


インターネット上におけるテキストサイトを見て、 特徴をとらえる。

■WEB の世界

WEB ってなんじゃね、ほらあれだろインターネットって奴。

言葉の定義という物は何というか難しい物で。
ここで言いたい WEB および WEB サイトは、HTTP ページおよびそのサイトと 定義します。ようするにあれだ、WEB ブラウザで閲覧をしてクリックを すると別のページに飛んでいく仕組み。
そう、WEB 最大の特徴はこの「クリックしたら別ページ」というハイパー リンクにあると思うのですよね。何をいまさらなどとは言わないでください、 一応そこから書き始めたいのですから。
大体からして HTTP は「はいぱーてきすととらんすふぁーぷろとこる」の 略であることからもわかるように、ハイパーテキストの実装の一つで あります。ハイパーテキストという言葉に馴染みのない人のために簡単に 説明をしますと、これは特定箇所をクリックすると別の箇所やページに ジャンプする事のできる文章。WEB じゃないハイパーテキストというと OS やアプリケーションの機能を説明するヘルプファイルに良く使われて いたりしますね。Macintosh の HyperCard などもそうですが。
ハイパーテキストはコンピューターによって実現した、実際の書籍では 表現できない独自の表現手法です。知りたい語句や単語をクリックすると それを説明している新しいページへと飛ぶ、今となっては当たり前かも しれませんけれども、結構センセーショナルなデビューだったのですよ。
で、それをインターネット上に持ち込んで、各サーバー間の分散型 データベースによって構築したのが HTTP であり、それらが連携している 様をとって WEB(蜘蛛の糸)と称したわけですね。

何が言いたいかというと、基本的に WEB はハイパーテキスト、つまり 文字媒体からのスタートでありそれが身上だと言うこと。そして、 繋がってナンボのものであると言うこと。
少なくとも私はそう思っています。

■個人サイトと日記の世界

インターネットと WEB の世界に個人サイトが入ってきて閲覧する側 としては俄然面白くなってきました。しかも、中心となっていたのは パソコン通信網で慣らした猛者達です。
当初は CG 描きが自身の絵を掲載しつつコミュニティを作って いったのが中心だったと思います。おおよそパソコン通信の延長的に 始まりましたが、明らかに新しい要素が付け加わっていました。
それが「リンク集」と「日記」です。

皆が集まって BBS に書き込みをしているパソコン通信と違ってどこに サイトがあるのか、誰がサイトを持っているのかわかりにくい状況で あるゆえ、自分にとって有用なサイトを列挙した公開ブックマークと してのリンク集は確実な需要を得ました。例えば、お絵かき系の 個人ブックマークから始まったサイトの典型が TINAMI です。
で、日記はどうして始まったのかというと微妙にわからないのですが その必然を推測することは可能です。日記は個人が意見を述べるのに 最適かつ手頃な単位であること、そして View を稼げるということ。
皆さんはネットサーフィンをしていて同じサイトに何度も訪れる事が どれくらいあるでしょうか。ほとんどのページは一回見て終わりとか、 ブックマークはしてあるけどそうそう訪れることはないとかじゃない ですか。何度も覗くかどうかは「更新」されて新しい記事があるか どうかにかかってくるのではないでしょうか。
個人で WEB ページを作るのがいくらたやすいといってもそうそう更新 できるものではありません。そのためにプライベートな時間を割くの ですからそれなりの労力を消費します。故に、更新間隔は大きく空く ことになります。そうそうネタを用意できるわけじゃないですからね。
ですが日記ならばどうでしょう。その日有ったことを記述していくわけ ですから原則的に毎日更新できるわけです。ですからその日記を見に 何度も訪れてくれたり、常連になってくれたりする人が発生することに なります。
自分の文章を楽しみに見に来てくれる人が居る、そのことは個人サイトに とってどれだけうれしくて励みになることか。サイトをお持ちのみなさん なら言わずともわかっていただけるのではないかと。

ここで頭の固い人、おそらく古い世代の方々は疑問を持つ様です。
「プライベートをさらけ出したり、他人のプライベートを覗き見て 面白いのか?」、と。
ここでの問題は WEB 日記と旧来の日記を同じ物としているとしている 所でしょう。WEB 日記は日記とは違うのか? 違うでしょう。WEB 日記は あくまで他人に見て貰うために書いているものです。日々有ったことを 綴ってはいますが、それを元にしたネタ帳みたいなものです。 そこにはプライベートな生活が赤裸々に描かれているわけではなく、 生活をベースにその人の思想が描かれているのです。
例えば何か大きな事件があったとします、TV のニュースはもちろん ですが WEB 日記上もその事件で持ちきりになっています。ですが、 日記はそれを書いた人の数だけ違うことが書かれているわけで。
あー、この人はこう感じたのか。えー、こんな見方もあるの。そうそう、 俺もそう思ったんだよ。という様に多くの人の色々な意見を見て回れる わけですよ。これは他のマスメディアでは得られない楽しみの形で ありますし、大人数での大討論会なんて実際にはそうそうできる物では ありません。
そしてその他人の思想を読んで回るのが面白いわけです。
WEB 日記だけでなく WEB サイト全体に言える事ですが、基本的には 制作者の放談です。そこで自分の意見を主張できますが、ほとんどの 場合相手(読み手)からの返答は期待できないでしょう。

■ハイパーテキスト日記

さて、そんな外部へと向けた「日記型アピール」である WEB 日記ですが、 当初はやはり自分のサイトの中につぶやき的に存在している閉鎖型の コンテンツでありました。
WEB 日記は WEB サイトですから当然ハイパーリンクを張ることが 可能です。読者に対し逐次説明することが困難な事や、他のサイトを 見てくれといった示唆をハイパーリンクによって行うことが出来ます ので、そういった点からも自ずと旧来の日記とは違った趣を持つことに なります。

そんななか劇的な変化が訪れます。WEB 日記の更新日時一覧リストが 作られた事です。このあたりどこが発端かは他の場所に言及があったように 記憶していますのでそちらをご参照ください。正直私はそのあたりの 顛末に詳しくはありませんので。
WEB 日記は WEB というコンテンツの中でも更新が頻繁に行われる方に 入りまして、それゆえにアマチュアでも更新頻度だけは高いページが 作れるというメリットがあるというのは先も語りました。で、それが あまりにも頻繁だったり不定だったりするので読み手としてはいつ 更新されたのかという情報が欲しくなったわけですね。その必然の 結果として出てきたのが日記更新日時の一覧なわけです。
最初見たときは「ふーん便利かも」とだけしか思わなかったのですが、 それが日記サイトへいくらかの変化を招き入れます。
それまでは無秩序に散在していた日記サイトが更新リストにより同列に 並びそのページを一つのルートとした横の連携が生まれてきます。
例えば、何かニュース記事があったとしてそれにリンクを張りつつ 自身の感想を書いたとします。WEB 日記では日常的な光景ですね。
そうやって参照型の内容が増えてきたところで、参照先をニュース記事 ではなくて他人の WEB 日記に張ったらどうなるでしょう。他の人の WEB 日記に書かれていることに対し自分の意見を述べたとしたら。 これはもちろんアリでしょうし特筆すべきところも有りません。 ところがこのハイパーリンクによる参照と意見の提示が複数回連続で 行われたとしたら。そうなるともはや「会話」であり個人の日記とは また違った表現の世界が生まれてきます。
その引き金となったのが、WEB 日記間を同列に結ぶ更新リストの存在、 そして WEB 日記著者同士の連帯感(身内)であったと思われます。
このように他の WEB 日記に意図してハイパーリンクを張る事により、 返信を期待しない繋がりの緩いハイパーテキストコンテンツとなります。
言い方を変えればアーティクルを自分の所に持つ「分散型掲示板システム」 であるわけです。

■個人ニュースサイトという世界

個人テキストサイトのもう一つの勇として「個人ニュースサイト」なる ものが存在します。
これは WEB 上に存在する様々なニュースサイトから自分にとって気になる 記事のヘッドラインだけを陳列しそこへのハイパーリンクを張るといった 形式の個人的メモです。言い方を変えるとリンクをコピペで集めたページ ということになり、テキストコンテンツとしては卑怯(失礼以後でフォローします) な部類に入るものです。
そんな個人ニュースサイトのどこが面白いのか。そこを考察するとここに また WEB ならではの愉しみが見えてくることになります。

個人ニュースサイトが面白い点は 2つ存在すると思います。
1つは完全に著者の趣味で集めてきたニュースだけが掲載されている点。
もし読者の感性や興味に近しい趣向を持った著者が運営している 個人ニュースサイトを見つけることができたなら、その読者にとって そこは有益な情報のみがクリップされているすばらしいページとなり得ます。
もう 1つは、大抵の場合個人ニュースサイトではニュースへのリンクだけで なく、その記事への一言感想が付いている点。この一言感想が実はものすごく 重要かつ面白い要素であるのです。
同じニュースが各個人ニュースサイトで取り上げられていてもコメントが 皆違いますし、その違うコメントを読みたいがために各サイトを巡ったりも します。当然人気のあるサイトはコメントの面白いところであるわけです。
こうして見るとその面白い要因というのは WEB 日記のところで触れたのと 同じ物である事に気が付きます。日記やニュースを通じて著者の思想が浮き彫り になり、それを愉しむという点に集約していきます。

また、この個人ニュースサイトは 2000年に躍進し、2001年に大きく変化したと 思っています。それは、各個人ニュースサイト間の繋がり、連携が確立していった ことです。
最初はお気に入りの個人ニュースサイト目指してスタートしたのでしょう、 各個人ニュースサイトには他のニュースサイトへのリンクが数多く張られて います。そしてそれが増えるにつれ個人ニュースサイト著者間のコミュニティー という物が発生していきます。それとともにニュースソース自体も 「情報源、他のニュースサイト」というものが増えていきます。実はこれは 凄いことで、どこか 1カ所がスクープを仕入れたとします、そしてそれが みんなの興味を引く物であった場合個人ニュースサイトに掲載され一瞬の うちに伝播します。時間にして 1日もかからないでしょう、ほんのうわさ話で あっても瞬く間に情報リレーが行われ WEB 上に広まるのです。普段サイトを 眺めているとあまり実感がわきませんが、連携の形を蜘蛛の巣状の図にして 伝わる様を描いたとしたら、それはそれはサイバーな光景となることでしょう。
さて、2001年に大きく変化したと書きましたが、それはもう一つの事象にも かかってきます。それは個人ニュースサイトの WEB 日記化であります。 まあ、元々個人ニュースサイトの存在自体が日記の亜流みたいなものでは あったのですが、コミュニティーの確立と意図された他サイトとの連携が それをより一層強めます。先に論じた様に個人ニュースサイトの面白さの 一つは、著者のコメントです。このコメントの部分が肥大するとそれは WEB 日記に限りなく近づきます。また逆に WEB 日記内にネタの元となる ニュースへのハイパーリンク、これが増えると個人ニュースサイトに 近づいていくことになります。

実際、個人ニュースサイトコミュニティーに存在していて前身が日記で あるサイトも少なくはありません。普段お世話になっている所では、 「好き好き大好き」さんとか 「変人窟」さんなどが挙げられます。
著者の趣味趣向や、思想によってコミュニティー分けされることはあるで しょうが、WEB 日記と個人ニュースサイトの差異は 2001年の奔流を持って ほぼ完全に無くなったのではないかと思っています。しかもそれが、お互い 別のスタンスから始まっているのに「面白いテキスト」という共通の目標の 結果ほぼ似通った物になったというあたりが実に興味深くはないでしょうか。

■掲示板とクローズドコミュニティ

そしてもう一つのメジャーテキストコンテンツである WEB 掲示板の愉しみ についても論じていきたいと思います。

先に挙げた WEB 日記と個人ニュースサイトに比べ個人の WEB 掲示板という ものは非常にクローズドな世界観を持っている様に思います。基本的には サイトのオーナーがいて、そのオーナーを頂点とした世界となっています。 そしてサイトを見た読者がそれに対する感想を書いたり、オーナーとの対話 をするために掲示板へと書き込みをするというのが一般的な形態です。
それ以外で言うと共通の話題で会話をするためにその話題が通じる コミュニティーが運営する掲示板へ集まったりします。この場合は掲示板が 意図する話題しか語れないという縛りが入ります。 それらの限定された話題以外の事を語ったり、オーナーがいるのにそれとは 関係なく利用者間で盛り上がっていたりすると大抵の場合は弾劾されます。 一般に言う「板違い」「荒らし」「電波」というあたりでしょうか。
そういった非常にクローズドな空気が WEB 掲示板には存在します。また、 掲示板毎に話題が完結しているため、他の掲示板から話題を持ち込むという 行為が行いにくくなっています。もし他のサイトや掲示板のコンテンツを ネタに語り合いたいと思ったら「こういうネタを見つけたんですけど」と まずリンクを張る行為から始まります。パソコン通信時代でいうところの 「転載」にあたる行為だと思います。そして転載先の掲示板で盛り上がって いたとしても、それが元のサイトへとフィードバックしていく事はほとんど ないでしょう。
そういった仲間同士のクローズドコミュニティであるところが WEB 掲示板 の魅力とも言えなくはありません。
そういったハイパーリンク的ではなくパソコン通信時代の概念的な形式の WEB 掲示板が未だに根強く残っているのはなぜでしょう。それは、多くの 人にとって「ちょうど良いサイズ」の場であるからではないでしょうか。
自分でサイトを作るほどのネタを持っていない、とか良く聞く言葉であります。 日記を書くにもそんな毎日書くのも大変だし、というのも正論でしょう。 ですが掲示板に書き込むだけならばそれほどの文章的技量も労力も要しません これならばと書き込むのだと思います。
それに掲示板には多くの人が集まっています、まあ最低でもオーナーくらいは いるでしょう。そしてその人達の意見が常に読めますし、自分の発言に対し かなりストレートに応答があります。インターネット全体としてはクローズド かもしれませんか、その中にあっては繋がっているわけです。
しかし、やはり掲示板の中に人がいないと面白くはありませんから、人がいる ところが好まれますしそういったところにみんな集まっていったりする現象も 見られたりします。

■そして繋がっていく明日へ

以上テキストサイトの面白さをハイパーリンクと連係構造から論じてみました。 ここで私が結論づけている「面白いテキストサイト」というのは といった所です。
あくまで構造的な部位に着目し、内容の面白さについては別問題として おきます。

ネットワークは繋がってナンボであり、繋がるからこそ愉しみも広がる ということを体現している例だと思います。電話やメールに比べて非常に 粗な繋がりではありますが、その先にいるのは確実に人間であり、人間と コミュニケートできている限りそれは面白いものなのです。
みんなの本音が聞けるというあたり、さすがにこれは個人サイトでしか 行えないだろうと言った感もありますが。
結局掲示板もスケールモデルが小さいだけで愉しみの方向性としては同じ なんですよね。

では、分散型で linkage な WEB 掲示板とは? という考察は次回に。
今回敢えて避けていた某巨大掲示板も次回にからめて。(たぶん)


Feb.23.2002 れろれろ@ふみ (rero2@yuumu.org)