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ドキュメントデータベース

〜 個人の愚痴も情報資源 〜


よりインターネットらしい BBS とはなにか、どうあれば面白くひろがって いくのかを模索してみます。

■ゆびきたすぱらだいす

ここ1年ほど「ユビキタスコンピューティング」「ユビキタスネットワーク」 という単語が企業から発せられメディアの上を踊っている。詳しい意は各人 ご存じの事として、ようするにコンピュータネットワークが身近かついつでも 扱えるような状況になることによってより一層生活文化レベルが向上する ということですね。なんとなく玉虫色で具体的イメージがわきにくい言葉でも あります。
しかし、身の回りを振り返ってみると一昔前に比べて十分ネットワークは発展 しましたし、コンピュータはありとあらゆる形で生活に入り込んでおり即座に 利用できるようになっています。主に携帯電話の存在が大きいのですけれど、 ここまで発展したと言うことは多くの人がネットワークコンピューティングを 好んでおり、また必要としているという事でもあるのではないかと思います。

さて、情報が身近になったとしてなにがうれしいのでしょうか。いや、ちょっと 質問を変えましょう、どのような情報が即座に利用できるからうれしいの でしょうか。
ありとあらゆる大衆を目的としてそのために情報操作もありえるマスメディア コンテンツを享受できるからうれしいのでしょうか、というと微妙に違いますね。 企業の都合押しつけであるコマーシャルコンテンツをいつでもどこでも見せつけ られるというのも違います。
あくまで自分が求める情報が、必要なときに即座に手に入るからうれしいの ですよね。

で、この自分が求める情報、楽しい情報、というのがなんなのかというのが 問題なのですけれども、ここでは「人との語らい」という事にしておきます。
ネットの向こうに居る人とのコミュニケートが最も楽しいのであり、そのために ネットワークがユビキタスであって欲しいのです。

■井戸端会議と膨らんだ風船

ここ数年で電子掲示板の話をするときに避けて通れない場所があります。
日本最大の非営利運営掲示板 「2ちゃんねる」ですね。

なんでもありの暴言放題な場所として人気を高め、社会現象とも言われる 掲示板ですがここ 2年はユーザー間による慣習的協定と自主的自治によって すっかり落ち着いた存在になりました。読み手としても慣れたというのも あるかもしれませんが、暴言がもてはやされるような事は無くなり コミュニケーションの場として存在しています。それでも、独特の空気と 文法がありますので外から見ていると荒々しく見えるかもしれませんし、 わかっていても馴染めない人もいると思います。
なぜに2ちゃんねるがこうも人を寄せ付けるのでしょうか。それはスレッド 式だからでも、匿名性だからでもないと私は思います。その理由は単純に ただひとつ「そこに人が集まっているから」じゃないでしょうか。
いつ行っても人が居て何かしらレスがのびている。人がいっぱいいるから 板もたくさんあるしスレッドもたくさんある。書き込みが多いから楽しい、 だからどんどん人が集まる。人が集まるから板が増える。そんな単純な スパイラルなのです。それであまりにも人が集まりすぎて自重崩壊を 起こしかけているというのも皮肉な状況ですね。
そこまでして2ちゃんねるでなくてはならないのでしょうか。これは結構 複雑な問題です。2ちゃんねると同様の場を提供することは誰にでも 可能ですが、2ちゃんねるに参加しているのと同じだけの人数をそこに 集めることは現状不可能でしょう。

この一極集中の状況を見て最盛期のパソコン通信BBS を思い出さずには いられません。NiftyServe や PC-VAN、人が集まるので書き込みが多い、 書き込みが多いので人が集まる、人が集まるので [板/SIG/フォーラム]が 増える、システムが肥大する。
そして運営面の色々なゆがみも出たりするわけです。 ■便所の落書きが資産になるとき 2ちゃんねるは掲示板ですので、そこに行かないと記事が読めないタイプの コンテンツです。それ故に一極集中化してしまい、肥大化する一方にあります。 ある意味クローズドな世界であるわけですが、あまりにも莫大な文字量な為 読み手を支援するためのスレッドガイド的なサイトがいくつか立ち上がります。
もともと単独スレッドは URL 指定で直に飛ぶことができたために可能となって いた事ですが、昔はスレッド一つが単位でしたので「このスレッドが熱い」的な 紹介しかできませんでした。それでも、今盛り上がっているスレッドはどこか というニュースは十分にありがたく、どれどれとのぞきにいったものです。

そんな中、ある意味革命的な改良がなされました。システムの改良により、 スレッドだけでなく、スレッド内の記事を表示する範囲を指定することが できるようになったのです。突然できるようになったわけでなく、夜間の全表示 抑制から、100記事単位の表示、最新50記事の表示、任意範囲の表示と段階を 追って拡張されたので「革命的」というのが妥当かどうかはわかりませんけれ ども。
ですが、この改良がちょうど個人ニュースサイトの隆盛と重なったことで 独特のリンキングが行われる様になってきました。それまでは「このスレッドが 熱い」という紹介しかできなかったのですが、この記事範囲の指定とそれを 含めたリンクが可能となったことにより「このスレッドの >>62 さんの書き込み がすげえ」といったより具体的なポインティングが実現したのです。
これによって2ちゃんねるの記事群が大規模なテキストデータベースと化し、 外部からそれをポインティングするといった構造ができあがりました。
ニュースサイト側からみると「おいお前らこの記事みてください」といった 構造で、ニュースサイト間はそれぞれに連携しているのでそれゆえに、 2ちゃんねるという巨大テキストデータベースが WEB の中に取り込まれた といっても良いでしょう。

掲示板内部では外部のサイトへのリンクを書き込む事ができるわけですから、 直接的ではないものの、緩やかなハイパーリンクの構造が掲示板に持ち込める ことを示しています。

※現在の2ちゃんねるでは掲示板内からの直接リンクは一旦広告ページに 飛んでから間接的に飛んでくるので、Referer を見てもどの記事から飛んで きたのがわからなくなってしまいました。リンクを張られた側にとって 元記事がわからなくなってしまった事は大きな損失であり、まことに残念な事です。

■神の手の篩い

メールや掲示板では「宣伝」や「広告」のアーティクルが嫌われる傾向に あります。話が盛り上がっているところに話題とは全く関係なく、かつ発信者の 利益追求しか意味を持たないものが紛れ込んできたら辟易もしようという ものです。
HTTP な WEB では広告ページというのが意味を持ちません。広告バナーという 手段しかないのでコンテンツ制作者の許可を得て広告を載せて貰うといった 手段しかないことになります。なぜでしょう。
これはハイパーテキストという構造が生んだ奇妙な利益です。
ページが存在していてもそれがどこか他のページからリンクが張られていなけ ればそのページは永遠に表に現れずひっそりとしているだけです。逆に人気の あるサイトはあらゆるところからリンクが張られているので容易にたどり着く ことができる様になっています。それゆえ、人気のあるサイトが上位に来、 人気の無いサイトはいつまでも陽があたらないという絶妙な資本主義的構造が そこに生まれるわけです。
この人気のある記事だけが残るという構造を掲示板にも持ち込めるでしょうか。 ハイパーリンクを駆使するとそれなりにできそうな気がします。

たしか「任意たん」のセリフだったと思うのですが「こんな奴がイタイ」という 一つとして「お気に入り絵描きの掲示板を日記代わりに使うヤツ」というのが あり笑った覚えがあります。でもそれはやってはいけない禁じ手なのでしょうか。
記事間にリンク構造が生じ、読者の目的記事とそうでない記事がちゃんと 選別できるならば問題ないのではないかと思います。掲示板の中に管理者以外の 日記を許容できるシステムというのも検討していく道なのではないのでしょうか。 従来のシステムでそれが迷惑なのは、話題の中に紛れ込むからですよね。
そうでなくさいしょからそれが別話題として分離されていたら許容できるのでは ないかと思います。2ちゃんねるでのスレッドが大分近い概念ではありますけど。

■リテラシー規模

なぜに掲示板にこだわるのかというのは以前も書きましたが、発言者のリテラシー にとって適切なサイズであるというのが理由の一つだと思っています。
本当に主張したいことがあって、全世界に向かってそれを提示したい、そして それをするだけの覚悟と行動力があるのならば WEB ページを作ることが解決への 道になります。しかし、WEB ページを作るほどのリテラシーもしくは行動力が わかない場合はそれよりも小さなパワーで発言できる掲示板という世界が 適しています。
インターネットが存在し、WEB ページを作るためのサーバーエリアをレンタルして くれるプロバイダーという企業が存在します。WEB ページを作成して公開したい 人はプロバイダーと契約をしてサーバーエリアを借り、そこを使ってインターネット 全体へ自分のページを公開できます。これの縮小構図として、掲示板を提供する 管理人がいて、その掲示板を借りて発言をするユーザーがいるという世界が あります。
現在の個人サイト掲示板はどちらかというと掲示板管理者とのチャットを行う 為に存在している傾向がありますが、ある程度の大きさになると掲示板参加者同士 の会話になり管理者の手から離れていきます。そういったユーザーへの自由度を 許容するというのも構成としてあるべきではないかと思います。

かつてパソコン通信掲示板のころ、草の根 BBS は知った仲間内の寄り合い所で あることが多かったのですが、ある程度人が増えるとコミュニティーが分裂したり シスオペが疎外されてしまったりして、閉鎖分離するところも少なくはありません でした。インターネットになってからは話の場を移動という事がやりやすくなった ので表だってはいませんが、まあ同じようなものだと思います。

■BBS と横の繋がり

今まで考察してきた事を総じると
「リンクあってこそのネットワーク」
「掲示板システムにももっとリンキングによる分散化を」
という事になります。
他の掲示板の記事に対してリンクを張ってそれについての意見を別の場所で述べたり 一つの話題を持ち回りで多くの場所で同時にできて、かつそれをできるだけ容易に ブラウズできる仕組みを持てないものかと考えます。

個々人の発言記事は個人のマシンの中にあって、それを P2P でリンキングする という掲示板システムもある意味理想かもしれません。でもまだまだダイヤル アップ接続の人も多いですから、サーバクライアントシステムはしばらく続く でしょう。それ以前により多くの人に使ってもらうためには、多くの人が利用 しているシステムであることが必要でやっぱりまだまだ「HTTP + WEB Browser」 だと思うし、その枠組みで動く「WEB 掲示板」なんではないかと思う次第です。


Mar.20.2002 れろれろ@ふみ (rero2@yuumu.org)