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ネットとウェブと掲示板
〜私たちは繋がっていく〜
個人が利用できるコンピューターネットワークについて、どのように
発展したか、年寄りの昔話です。
■電話で話をしない日
正確な年は覚えていないのですが日本で「パソコン通信」なるものが
始まったのは 15年くらい前だったと思います。
家庭の電話機はモジュラー型でなくコード直付が主で、モデムより
音響カプラー(電話機の受話器にはめる機器)がメインでどちらも
通信速度は 300bps でした。
私が最初に入手したモデムも 300bps でした。当時は 1200bps が
主流になりつつあり、叩き売り(それでも2万円)になっていた所を
買ってきたといった感じでしたが。
■パソコン通信というもの
インターネットからネットワーク社会に入ってきた人は知らないかも
しれないのでパソコン通信という物について簡単に解説をしてみたいと
思います。
パソコン通信は「電子掲示板(BBS)」とも呼ばれていました。まあ、
ようするに掲示板とチャットがメインでその他のコンテンツはほとんど
なかったってことなんですが。
パソコン通信は一つのサーバーがあってそこに掲示板があります。
ユーザーはその掲示板を見るためにそのサーバーにモデムと電話回線で
繋ぎます。サーバーが遠くにあれば、その距離の電話料金を払わなけ
ればなりません。現在のインターネットプロバイダで例えると、
ダイヤルアップのアクセスポイントみたいなものです。
地方に住んでいる人が関東圏の人とお話をしたい場合は、わざわざ
東京の BBS まで電話をかけて繋げるのです。
もちろん、掲示板の書き込みはサーバーの中で閉じていますから、
各 BBS の話題は連携していません。特定の人たちの話題を読みたい
為に、その特定の BBS に接続しなければならないわけですよ。
それゆえに「転載」という独特の文化もありました。フリーウェアや
画像などを別の BBS へ移動掲載する事でコンテンツをより広い人に
見て貰おうという行為の事です。
■一極集中化
なんにせよ特定の BBS に繋がないと掲示板も読めないわけですから
みんなでそこに集中することになるわけです。
だけれども草の根と呼ばれる個人経営の BBS とかは回線数も少なく
同時にアクセスできるのは1〜8人とかいった感じでした。当然皆
争うように回線を奪い合います。リダイヤル地獄です。
また、本当に楽しい書き込みをする人たちが集うところは人気が
でますし、そうでないところは廃れます。(それを逆手にとって
仲間内の閉鎖空間を作るのも可能でしたが)
また、大資本であらゆる人たちを集め地域性や情報分散性を解消
する方向性もありました。PC-VAN や NiftySERVE といった商用
巨大BBSです。みんなが利用しているからメールも利用しやすいと
いうメリットもあり、大手は大手で賑わっていきます。しかし、
やはりリダイヤル等の歪みは中々なくなりません。
それ以上に地方在住だった私は莫大な電話代(平均で月4万円だったかな)
を払い続ける状態にありました。
■インターネットメールの衝撃
そうこうしてパソコン通信というネットワークにどっぷりと浸る私
でしたが、世の中には UNIX という素晴らしい OS があり、それらを
繋ぐ UNIX to UNIX ネットワークという物があるらしいという事で
夢を馳せます。(JUICE とかあった頃です)
後々これを「インターネット」と呼ぶことになるわけで。
私の大学の研究室はまだインターネットに対し UUCP 接続だったので
メインはメールとニュースグループでしたが。
で、このメールを触ってそれなりに衝撃を食らった物です。それまで
おっきなサーバーにみんなが集中することで大勢かつ広範囲に繋がる
ことが出来ていたパソコン通信とは根本的に考えが違います。隣に
メールをほおるだけであとはみんなが責任をもってバケツリレーして
目的地まで届けてくれるのですから。
(これは現在のインターネットでもそうです)
■そして WWW の時代へ
時代は緩やかにインターネットへと動き始めます、ですがこのとき
プロバイダーは IIJ しかなく、UUCP接続ですら月 3万円以上と非常に
高価でした。そんな中登場した個人向けプロバイダの bekkoame と
RIM-NET の月3000円+従量という価格がどれだけ破格であったか当時の
興奮を伝えられるでしょうか。
このころはまだ gopher というサービスが多くあり、http(WEB) は
登場間もなく発展途中、そんな時代でした。
gopher なんて proxy の設定項目以外見たこともない人がほとんど
でしょうね。このへんも説明したいのですがここでは省略します、
まあ絵や組版がない web みたいなものですね。テキストだけを
あつかったハイパーテキストでした。
最初は研究機関的なところにしか WEB サイトは無く私にとっては
正直つまらないものでした。所感としては「サイトが増えれば面白い
かもね」といったところで。
で、その日本での WEB を面白くする人々が現れました。パソコン通信
時代のヘビーユーザーであり、CG描きと呼ばれる部類のネットワーカー
でした。絵を伴うことができる WEB は彼らにとって格好のおもちゃで
あったわけです。ネットワークの面白さを知り尽くした人たちが、
インターネットの面白さを引き出したのです。
これによって個人サイトが増えました。
個人サイトの存在はインターネット上の WEB を断然面白いものに作り
変えていきました。個人のページは読んでいて面白いですし、CG描きさんの
ページは綺麗な画像がいっぱいです。
■ WEB とパソコン通信の違い
WEB (WWW, HTTP) とパソコン通信は色々な違いがあり、その違いの点で
WEB の方が勝っています。その理由はいくつもあるのですが、WEB 最大の
メリットは「分散型データベース」という点につきると思います。
例え凡庸な日記でもそれはデータであり、データベースです。
パソコン通信の時みたいに一つのサーバーが全ての掲示板とコンテンツを
保持しているわけでなく、各プロバイダーとかのそれぞれのサーバーが
コンテンツを保持しているので負荷が分散されます。そしてそれが全世界
から参照できるわけです。
どこからも参照できるということはパソコン通信の掲示板みたいに
自分が訪れるところのメッセージしか見れない、といったことが無くなり
ました。誰もが同じページを見ることができるわけですから。
それと同時に各コンテンツを個人が自由に作成することができる様に
なりました。それまでの様にシスオペやシグオペといった管理者に縛られる
事も無くなったのです。
こうして、パソコン通信のサーバーに集まる人たちだけで繋がっていた
ものがより広い場所へ、日本、そして全世界へといった規模で繋がって
行くのです。
■そして……
そしてインターネットは盛り上がり続けるのですが、どうしても納得が
いかない点があります。それは民間における「WEB掲示板」の浸透です。
分散型データベースである WEB において、なぜ古い一極集中型である
掲示板(BBS)に依存しなくてはならないのでしょう。
といったところで次回へ続く。
Feb.08.2002 れろれろ@ふみ(K.Kunikane)